皆様こんにちは。葉月です。
バンクーバーはようやく夏っぽい気候になってきました。北米は夏休みだからか結構多くの観光客がいるように感じます。
そういえば今年は私にとって、夏休みという概念が存在しなさそうです()
まぁ大学に入ってからは夏休みにアルバイトをしていることが多いのであんまり関係ないといえば関係ないですが…。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、今回のお話は中国人コミュニティについてです。
人口の多さもさることながら、バンクーバーにおいても、非常に多くの中国人の方が住んでいます。
同じ国籍の人がある程度集まるとコミュニティが出来るもので、そういった中国人コミュニティは「中華街」という名称で日本では存在しています。
横浜や神戸にある中華街に行ったことがある人も多いでしょう。
肉まんやゴマ団子などの食べ物がおいしいのもそうですが、ちょっとした異国気分を味わえる楽しい場所なイメージがあると思います。
しかし、北米でのChinatown(漢字表記だと「唐人街」って書かれることが多いですね)は、日本の中華街のイメージとは違って、治安が悪い場所、ホームレスが多い場所として有名です。
これはバンクーバーも例外ではなく、バンクーバー市の中で治安が悪い場所はどこか、となると、真っ先にChina Town周辺のEast Hastings Streetが挙がります。下の動画を見てもらえばヤバさは理解出来ると思います。
位置関係は下の図の通りです。余談ですが、Hastings Streetの上にあるPowell Streetは戦前期にはJapan Townとして日本人コミュニティがあったらしいです。今はほとんどゴーストタウンになっていますが、名残りとして日本人学校があります(画像はWikipediaより)。
他のChinatownについては、6月、モントリオールのQuartier de Chonoise(唐人街)に調査がてらお散歩しに行きました。こちらのChinatownはお店も栄えていて、そこまで治安が悪い感じではなさそうでしたが、その周辺地域にホームレスがけっこういて、治安がちょっと悪そうな感じではありました。
ニューヨークのChinatownも治安が…という話を聞きますが、実際に行ったことはないので言及は避けたいと思います。
さて、北米でのチャイナタウンのイメージが何となく描けた所で、なんでチャイナタウンはそんなイメージになっているのか? という点を見ていきたいと思います。
歴史的には、19世紀真ん中辺りで、北米に中国人が労働力として移民してきたのが黎明期です。世界史だと、アメリカの歴史で、太平洋横断鉄道を作るために「苦力」(中国人移民を指した)が用いられた、なんて習ったことを覚えている人もいるでしょうか *1。
当然ながら、働くためには食料は住む場所を確保する必要がありましたが、白人が多かった社会で、中国人(アジア人)が大きく差別されただろうことは想像に難くありません。
そこでチャイナタウンというコミュニティを作って、同胞が固まる場所を作った。これがチャイナタウンの始まりになります。
チャイナタウンは、白人というマジョリティと、移民(マイノリティ)という差によって生まれたコミュニティですが、マジョリティの社会では生きられない、社会構造的に下層に位置する人たちも次第に流入していきます。
この「マジョリティの社会では生きられない」人々として、ホームレス、売春婦や貧困労働者などが集まっていきますが、社会から距離を置かれた場所のため、風紀や秩序を取り締まるものがなく、だんだんと治安が悪くなっていきます。
そうして、最初に紹介したようにChinatown(周辺)は治安が悪い場所、として認知されるようになっていきました。
現在のバンクーバーのチャイナタウンは、Chinaと書いていながら、恐らく中国人が多く住む場所ではなくなっている。つまり、中国人が身を寄せるコミュニティの場所としての機能は薄れていると思います。
というか、今はゴーストタウンになりつつあります。ホテルやお店の壁紙が剥がれていたり、窓ガラスが割れていたりと、誰も修復する人が居ないのか、荒れたまま放置されている建物が多いのが印象的です。
しかし建物の扉に頑丈そうな鉄格子が囲われてあったりと、治安を警戒しているのがひしひしと伝わってきます。
何回かバンクーバーのチャイナタウンを歩いたことがありますが、日本の中華街と違って、元々は現地にいる中国人のために出来た場所なので、中華系の独特の匂いを感じます(香辛料か何かの匂いかな)。また、チャイナタウンで見かける中国人の方もかなり高齢な人が多く、貧困層なのか、昔から住んでいる人なのか気になるところです。
小耳に挟んだ程度の話ですが、普通の中国人はリッチモンドにいる、みたいなことも聞きます。気になったのでちょっと統計を見てみたところ、リッチモンド市にはバンクーバー全体のおよそ20%ほど(10.7万人 / 54万人)の中国人がいるみたいです。リッチモンド市の総人口が19.8万人なので、人口のほぼ過半数が中国人と考えると中々すごい場所だなぁ…。
ちなみにですが、自分が今住んでいるNorth Burnabyにも中国人の方は結構いるような印象があります。数字ではなく実感でしかないですが。
さて、なぜチャイナタウンという場所を取り上げたのか、といいますと、マイノリティとマジョリティという構造を知ることが出来ると思ったからです。
チャイナタウンという場所が悪いのではなく、マイノリティを括って排除したことで、社会的に排除された(隔絶された)層が固まる場所となってしまい、治安の悪い場所になってしまったという背景があり、現在も治安が悪い場所として認知されてしまっています。
歴史的には人種差別、移民(マイノリティ)隔離によって出来た場所でしたが、社会的に排除された層が固まる場所、という状況は現在も同じだと思います。
2018年にカナダ政府がマリファナ(大麻)を(一定の規制があるとはいえ)合法化し、チャイナタウンも中華系の匂いに加えて、大麻独特の匂いもする場所です。
移民が集まり、人種のごった返す場所においてもマイノリティとマジョリティという地位関係、力場が出来ているのが個人的に興味深いと思います。
基本的に治安がいいバンクーバーですが、歴史の負の遺産として、こんな場所が残されているのもまた興味深いと思い紹介してみました。
リッチモンドの中国人割合のデータ。Ethnic - Chineseの数を取り出しました。